会社に人生を預けるな
リスク・リテラシーを説いた本。この著者の本はやたら書店で見かけるけど購入するのは初めて。いや、この人が和訳した本を含めて2冊目か。
新書なので通勤時間で読める程度(自分は通勤時間が長いけど 往復約4時間弱)。
いや。売れるのも分かる。非常に論理的で読みやすい。腑に落ちる感がある。
リスクとリターンは表裏一体であり、適切にリスクをとり、リスクを制御する必要があると著者は言う。リスクは単なる『危険』や、『予測不可能』な事象ではない。
われわれは日常生活の中で、多くのリスクをとっている。ほとんどの場合、リスクとリターンのバランスを自覚することなく。
リスクマネジメントの能力は日常生活のなかで無自覚に取っているリスクを意識しコントロールすることで磨くことができる。
「継続は力なり」とはよく言うが、これが裏目に出たときのリスクは常に考える必要がある。
著者はたとえば「バナナダイエット」において、将来バナナに毒性が発見された場合体に毒素が蓄積されてしまう、白米を食べ続けることにより、血糖値が増加し、血管を傷つけるというリスクにさらされているという例を挙げている。
日々の小さな積み重ねがある日非常な効果をもたらしたり、壊滅的なダメージを与えたりということは想像に難くない。自分がよく思っているのは、駅のホームで電車が通り過ぎるのにホームの端ぎりぎりを歩く人や、車を運転していて車間をやたら詰める人がよくいるが、なぜそんなに「列車」や「車」そして「自分」を信じられるか分からない。スタントマンやレーサーではないのだからわれわれがそのような行為から得られるリターンなんてものはない。ある日突然ふらついて列車に引っかかったり、交通事故を起こしたりするのが関の山だ。
昨今の不況で正社員志向、終身雇用志向が強まっているが、一企業に特化したスキルしか持たないこと、企業の命運と自分自身の命運がリンクしてしまうこと、仕事と生活のバランスが取れないこと、これらは非常に大きなリスクである。
しかも、今日の新聞でも労働分配率が70%に近づいてきているので、正社員を含めた雇用整理は不可避であろうのようなことが書いてあった。要するに正社員だから安泰なんてことは決してない。
著者は、現在の日本の勤労者が抱える閉塞感を打開するには終身雇用制の緩和が必要というが、自分も強くそう思う。
終身雇用モデルはねずみ講みたいなもので、これから人口が減っていき、右肩上がりの経済成長も望めなければ、遠からず制度が破綻するのは目に見えている。
終身雇用という制度はアメリカの奴隷制度のようなものだと著者はいう(奴隷のようにこき使われるとか単純な話じゃないよ)。そういうものの見方もあるんだ。非常に面白い。