おくりびと
「おくりびと」見た。
死、宗教、儀式、穢れ、仕事、夫婦、子供、親子、父と息子。
今の日本では、日常であるはずの死が非日常に追いやられている。そんななかで、死を取り扱う人を題材にした本作は、「死」にフォーカスをあてることで、「生」をあぶりだす映画だと自分には思われた。
Amazon のレビューを見ると、「納棺師という職業自体、別に伝統もなく、たかだか50年前に始まったビジネスで仏教とは関連がない。儀式も社内規定に則っているだけ」 など、という意見もあるが、自分はそれらの「事実」は決して本作品のテーマを毀損するものではないと考える。
逆に、伝統ある葬送と伝統的で無い葬送の違とはなにか?
例えば、納棺師には伝統があると思わせることで、利益を上げられるとするならば、伝統とはいったいなんなのか?
既得権益?
そもそも儀式と社内規定に本質的な違いがあるのか?
などなど、逆に、そういう話を聞くと、現在の葬送のあり方についての疑問がわいてきたりする。
「死」を軽く扱っているという批判も散見されるが、本作では、それこそが、非日常へ追いやられた死を日常に引き戻すための仕掛けである。
やはり、いかに生きるべきかを自分に問い、よく生きることを訴えかける映画だと自分には感じられた。
逆に「仏教儀式の伝統のらち外の納棺師」を題材とした本作が、いかによりよく生きるかを問いかけるという点において、思想、哲学的には、より仏教的なのではないかとすら思う。